非電化の話
 

電化の歴史(すこし長文) 

非電化の意味論(すこし難解) 

非電化の運動論(すこし過激) 

遊牧民の夫婦と藤村

遊牧民の子供と非電化冷蔵庫

放牧中の羊の群れ

 いまモンゴルにいます。「非電化製品プロジェクト」がここで進み始めたからです。雄大な草原で、自然と一体になって暮らす心豊かな遊牧民の人たちにも、物質文明の波が押し寄せています。テレビを見たい、コンピューターが欲しい‥‥そういう文化に憧れて首都のウランバートルに移住した(元)遊牧民が数十万人――その人たちが仕事を得られず、辛い状況になっているのだそうです。 小さなTVくらいでしたら、移動式の小型太陽電池か風力発電装置でまかなえるので、遊牧を続けられますが、冷蔵庫や冷暖房も‥‥となると、小型風車では無理です。大型では、移動も購入も困難です。そういう悩ましい議論をしているところに、私の「非電化製品」の話がなぜか届いて、「それはいい!」ということになりました。現地の企業家が作って遊牧民が買う(羊との物々交換だけど)――その方がモンゴルの文化も産業も(もちろん環境も)壊されなくていい、発明の権利はただで上げる――というのが私からの提案でしたが、これも歓迎されました。

 5等星までくっきり見えるくらいにモンゴルの空は澄んでいます。非電化冷蔵庫や非電化冷暖房は、空が澄んでいるほど効率が良いので、いい効果をだせそうです。その結果、心豊かな遊牧生活を続けられて、そうすると、5等星が見える空もずっと続いて‥‥と(いい年をして)ロマンチックになっています。

「非電化製品(私の造語)」を発明してみたくなったのは、5年ほど前のことです。自然共生型の国々を訪れる機会が多かったのですが、工業国の電化製品に憧れ、その方向を目指している人が多いことを知って、「いいのかな?」と思っている内に、「電気を使わなくても快適・便利は実現できる」という選択肢をプレゼントしたくなりました。モンゴルの話は、ですから大歓迎でした。

 自然共生型の国の人々向けにしか、私は「非電化製品」を考えていなかったのですが、「日本やアメリカのような工業国にこそ非電化製品は必要だ」と市民運動家の中村隆市さん(本書にしばしば登場してもらいます)に説教されました。言われてみればそんな気もしますので、本書を通じて非電化製品を紹介することにしました。電化製品を否定するのではなくて(私も電化製品の愛用者です)、「電気でなくても、ホドホドならできる」という発明例をお見せするだけです。愉しい選択肢に小さく加えていただければ、発明家として大きな仕合せです。

『愉しい非電化』まえがき‥‥より

 


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