【目次】
第1章 あの日から変わったこと、変わらないこと
第2章 はじめよう、非電化生活
第3章 「非電化思考」で人とつながる
第4章 お金とエネルギーにたよらない幸せ
第5章 いいことを、みんなで、愉しく
まえがきより
アフリカによくでかけます。アフリカの人たちは日々を楽しむ名人だから、陽気です。陰険な人なんていやしない。「自分はしあわせだろうか?」とか「人と比べてどうだろうか?」とか「人がどう見ているだろうか?」なんて考えない。そんな面倒くさいことを考えていたら日々を楽しむことなんてできやしない。ストレスになるから目標や約束も苦手です。だから目標や約束が得意な国の人たちからむごい目に合わされたりするのだけど、相変わらず目標や約束は気にしない。
アフリカの人たちは一日に一つのことしかしません。一年中バナナが成っているのだから一つやれば十分です。一つしかしないから時間がゆるやかです。だから日々を楽しめる。一つしかしないから、人の営為よりも地球の自浄力の方がいつも上回っていて、環境問題なんて起きるはずもない。経済摩擦なんて無縁です。
そんなアフリカの人たちが大好きだったのだけど、そのアフリカの人たちが、2000年ころからなんだか変です。口さえ開けば「僕たちは不幸だ」と言う。そして「不幸なのは貧しいからだ→豊かになれば幸せになる→豊かになるには経済成長すればいい。かっての日本、今の中国のように」と続いて「ソレッ!」という具合です。かくしてアフリカの人たちは勤勉になりつつあります。一日にたくさんのことをしようとする。だから目標も立てるようになりました。約束も以前よりはよく守ります・・・暗い顔をしながら。
アフリカにとっては地球の裏側の、日本の若者も2000年頃から変わり始めました。都会で立身出世を夢見る若者は、もはや少数派でしょう。
自然に恵まれたところで、ぬくもりのある人間関係のなかで、いいことをしながら、ゆったりと生きたい。そういう若者が多数派です。アフリカとは真逆の指向です。
が、しかし現実社会は経済成長優先の競争社会です。現実を受け入れながらも、「なんだか変だぞ!」という訝しさがこの国全体を覆い始めたたような印象があります。「この国のシステムは、自分たちを一体どこに連れてゆこうとしているのだろうか・・・」。
この訝しさは、やがて「自分たちでなんとかしなくては・・・」というもどかしさに変わります。おおむね2005年頃からでしょうか。この、もどかしさは3・11以後に、さらに一段と強まったようです。
那須の非電化工房には、訝しさやもどかしさが募った人たちが、ヒントを求めて足を運んでくださいます。既に地方に住居を移して、人や自然との共生生活を歩み始めた方も、共感を求めて訪れてくださいます。いい人たちばかりです。
この人たちと語り合っている内にわかりました。実は、みんな答えを既に持っているということ。それと、答えは持っているのだけど、明解な形になっていない人が多いということを。だから、この本で形にすることを試みました。
「人の心の奥底にある幸せに形を与える」のが発明家の仕事だとつねづね思っているからです。この本を読んで、我が意を得た・・・と言っていただければさいわいです。
2012年8月 栃木県那須町の非電化工房にて
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