非電化籾摺機・・・・・・「なぜ?」

籾殻は大変に硬い。何故こんなに硬いかと言うと珪素を多く含んでいるからです。余談ですが、半導体用の高純度シリコンを籾殻から取り出す研究がこのごろ盛んです。だからお米を籾で保存すれば虫に食われることはありません。酸化しにくく、1年でも2年でも美味しい状態を保つことができます。籾殻を取り去って、玄米か白米で貯蔵したらどうでしょう。すぐに虫に食われるし、1〜2ヶ月で酸化して不味い米になってしまいます。だから、お米は籾で保存する。昭和時代前半までの常識でしたが、今は非常識です。いま、日本のお米の99.9%は玄米か白米で保存されます。常温では痛んでしまうので、12℃〜15℃で貯蔵します。これを低温貯蔵と呼びます。低温貯蔵には電力が必要です。どれくらいの電力が低温貯蔵のために使われているのか―計算してみたら原発1.2基分でした(ワオッ!)。

お米の常識/非常識は、保存方法に留まりません。「稲刈りをすると天日干ししてから脱穀機で脱穀」という常識はいまでは非常識です。稲刈り・脱穀をすると、すぐに機械乾燥し、間を置かずに電動の大型籾摺機で籾摺り(籾殻を外すこと)をして玄米にしてしまいます。ご飯を炊くのも電気炊飯器が常識です。なにやら電気づくしです。お米の収穫から炊飯まで、一体どれくらいの電力が消費されているのでしょう。計算してみたら、原発4基分でした。

原発4基分というと、とてつもないエネルギーです。とてつもない犠牲とも言えます。原発4基分もの犠牲を払っているのだから、美味しくて安全で健康的なお米を安く手に入れている・・・・というわけには行きません。原発4基分ものコストが生じたからには、高く買ってもらわなければ「経済」が成り立ちません。かくして、あまり美味しくないお米を僕たちは高く買わされることになります。なんだか罠にはまったような気分になります。

お米は籾で保存することにしたらどうでしょう。1年分の籾を、稲刈りの後に近くの農家からまとめて仕入れます。スーパーから玄米や白米を購入する価格の半額近くで手に入れられるかもしれません。食べる前に食べる分だけ籾摺りします。籾摺りした玄米を(あるいは更に精米した白米を)圧力鍋や土鍋で炊き、炊きたてのご飯をいただきます。摺りたてのご飯と低温貯蔵した玄米とを食べ較べてみてください。美味しさの違いに驚くはずです。

美味しくて、健康的で安全なお米を安く手に入れる。結果として電力消費量は減ります。消費者と農家の繋がりも強くなりそうです。なんだか希望が湧いてきます。多くの人にこういう話をしてみました。受けました。ただし、このビジネスモデルを実現するためには、一つのことが欠けていました。家庭用の籾摺機です。だから、非電化籾摺機を作ってみました。

日本人にとって、お米は特別な意味があるような気がします。だからお米から入って、ヘンテコリンな社会システムを愉しみながら変えてゆくというのは如何でしょう!

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